▽三角波△

企業組織再編税制に関する法人税基本通達の改正 

 

 

 

 昨年の企業組織再編税制の整備等にともない、法人税基本通達の改正が先般国税庁より発表された。
 企業組織再編税制については、従来の法人税法にもまして制度の詳細にわたるまで、法律ならびに政令に書き込まれたが、なお適用にあたっての細部について実務上の疑問が生じており、今回の改正はそうした疑問点に明快な解決をもたらすものである。企業組織再編税制に関し、通達の主要な改正点を整理したい。


端数の取扱い


 合併や会社分割にともない、合併比率・分割比率の調整の関係で1株に満たない株式が発行される場合がある。昨年の通常国会における金庫株の解禁等を内容とする議員立法による商法改正において、こうした端数の処理について規定が整備され、原則として、端数部分の株式を競売に付し、その端数に応じた代金を従前の株主に交付することとされている。
 ところが、税制上の適格合併や適格分割の要件として、株主に対して株式以外に金銭等の交付がないことが要求されていることから、端数に関する処理を行うと、この要件を満たさなくなるのではないかとの疑問があったところである。今回の改正では、端数に関する譲渡対価を株主に交付した場合は、端数に相当する株式を交付したものとみなすこととし、適格要件に反しないということを明確にした。もちろん、実際に株式が交付されたわけではないので、共同事業を行うための組織再編成の場合の、株式継続保有要件を考慮する際の、保有が求められる株式にカウントされることはない。

従業者の範囲

 50%超100%未満のグループ内の再編成や共同事業のための再編成が適格となるための要件の一つに、承継される事業に携わる従業員のおおむね80%以上が事業を承継する法人に移転することが要求されている。出向で受け入れている者は従業員の数に含められるが、工場のラインの一部を受け持っている下請先の従業員や、日雇労働者は含めないことが明らかになった。
 また、こうした従業員が承継法人に移転した後に、従事する仕事は、当該移転事業に限定されるものではないことも明らかにされた。

事業規模の比較

 共同事業のための再編成が適格となる要件として、当事法人の事業規模がおおむね5倍を超えないことが求められているが、比較する指標として、法律・政令では事業の売上金額、従業者数、資本金額(合併の場合)が例示されていたが、通達では、金融機関における預金量が加えられた。しかも、こうした指標のいずれか一つが要件をクリアしていればよいことも明確にされた。


繰越欠損金の利用制限

 グループ内の適格合併の場合、租税回避防止の観点から、一定の要件を満たさなければ、グループ関係成立以前の繰越欠損金については合併後に利用ができないこととされている。3社以上の法人が合併する場合には、それぞれの法人のペアについて、この要件をクリアしているかどうかの検討を行う必要があり、いくつかのペアについて、この要件を満たしていないことが判明した場合の取扱いについて今回の通達改正で明らかにされた。要件を満たさないペアにおけるグループ関係成立の日がまちまちである場合には、最も合併の日に近い日以降の欠損金しか利用できないこととされた。

〈Y.O 〉