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IASB、東京会議開催

 IASB(国際会計基準審議会)の会議がさる3月19日から22日までの4日間、東京で開催され、「業績報告」、「株式・報酬制度」、「企業結合」、「保険会計」などについて議論が行われた。

  昨年から優先課題として取り組まれてきた「企業結合」については、企業合併する際の会計処理を、相手先の資産・負債を時価評価する方式(パーチェス法)で一本化することが固まった。

  また、19日には、東京会議を記念しての「国際会計基準シンポジウム」が開催され、IASB副議長トム・ジョーンズによる基調講演と企業会計基準委員会によるパネル・ディスカッションが行われた。

  パネリストには、IASB側はIASB議長デービッド・トゥイーディー氏をはじめ、トム・ジョーンズ、ハンス−ゲオルク・ブルンス(ドイツリエゾン)、ジム・ライゼイリング(米国リエゾン)、山田辰己氏(日本リエゾン)らが出席し、斎藤静樹氏(企業会計基準委員会委員長)らと、「業績評価」(1.米国・英国での議論、2.IASBでの議論の経緯)、「企業結合」(1.持分プーリング法の廃止、2.のれんの非償却と減損処理)について論議を交わした。

ASB 、IAS第19号「従業員給付」の対応を報告

 企業会計基準委員会(ASB )は、さる3月14日、第6回国際対応専門委員会を開催した。

 内容は、3月に東京で開催されたIASB会議の議事対応についての審議と、IAS第19号「従業員給付」の限定的な修正にかかわる公開草案への対応についての報告、また平成14年4月以降の国際対応専門委員会開催予定である。

  IAS 第19号「従業員給付」についての報告は、限定的な改訂が提案されていることが説明された。

 第58項で資産計上が制限されている場合において、年金資産の運用損が生じたときに、同項の規定をそのまま適用すると、資産計上額の上限が増加して利益が計上されるという不合理が生じるので、これを防ぐため、同項の資産計上額の上限が適用されている間に発生した保険数理差損および過去勤務費用は資産計上額の上限に加算しない規定を追加することとしている。

 なお、担当の専門委員より、本公開草案に対しては特にコメントを送付する必要はないとの報告があった。

 

2月理事会

 IASC理事会は2月19日から22日までロンドンで開催され、以下の議題が検討された。

    IAS 第19号「従業員給付」の限定的改訂

  年金数理差異の遅延認識にかかわる資産計上額の上限を抑えるものであり、昨今の適用利率引き下げに伴って多額の資産が計上される可能性が高いための対処。緊急に対応するため公開草案は理事会の後25日に発表され、3月25日にコメント受付を締切り4月の理事会で基準を検討するという期間設定となった。

    企業結合

 複数の親会社による共同経営を判定するための定義とガイダンスについて引き続き討議。

 少数株主持分を親会社の持分とは区分しながら資本の部に表示することに一時的に合意した。

    IFRSの初回適用

 最初にIFRSを適用する財務諸表はすべての資産負債がIFRSによって計算されるべきであることを再確認した。複数年にわたって財務諸表を表示する場合は、最初の年からIFRSが適用されていなければならない。

    現存する基準の改訂

 IAS 第1号「財務諸表の表示」、同第8号「期間損益、誤謬と会計方針の変更」、同第24号「関係会社に関する表示」、同第32号および第39号「金融商品」の改訂につき議論。

    保険契約

 保険契約にかかわる資産負債に適用する割引率、再保険の処理方法などにつきDraft Statement of Principles に基づいて協議。

    業績報告

 業績報告原則の構成、報告書の様式について英国基準を参考に討議。

    株式報酬会計

 ディスカッション・ペーパーに対して寄せられたコメントの追加分を検討。株式による報酬の支払いを費用認識することは概念フレームワークに沿っているとの結論に達し、広く理解を得るためにその理由づけを公開することで合意した。

EU議会、2005年からのIFRS適用を可決

  2005年からの上場会社へのIFRS適用をさる3月12日に賛成多数で可決した。ただし連結決算の強制は小規模な会社の会計処理への影響を考慮して認められなかった。また、EU以外の国でIFRS以外の国際的に認められた会計基準による決算を行っている会社には2007年まで猶予が与えられる。

 

FASB審議過程の効率化に関する提案

 FASBの委員を指名し,その運営を監視し,その運営基金を提供する,FASBの運営母体である財務会計基金(Financial Accounting Foundation )の理事会は,1月と3月の会合において,エンロンの挫折により,会計基準,および会計基準に準拠して作成され,監査される財務諸表のシステムが疑問視されていることを認め,会計基準の強力,透明,かつ厳格な設定システムを強化すると公表した。そして,その目的を達成する一助として,その構成員と他の関心を有する人々にFASBの構成および過程に関する一連の変更を提案した。

 〈FASBの構成委員数〉 FASBは18人の非常任委員により構成された米国公認会計士協会の会計原則審議会の機能を引き継いで1973年に設立され,7人の常任委員により構成されてきたが,その人数は効率と種々の見解・経歴を均衡させるのに適切だと考えられるとして当初提案され,人数を増減することが適切と思われるときは変更すべきものとされていた。

 最近の発生した事象を検討し,また急激に変化する事業環境の中で会計基準を公表するために要する時間を考慮すると,FASBの公開による正当な手続の質を維持しながら基準の設定過程を早めることが必要である。そのためには委員の数を5人に減らしたほうがより効率的に審議を進められるのではないかと理事会は考える。承認された場合には,任期満了による自然減を待って減員を行う予定である。

 〈FASBの構成〉 FASB発足当初の構成は,会計事務所4名,企業(または財務諸表作成側,以下同じ)・大学・投資機関各1名であった。会計事務所4名の要求は1977年に削除され,現在は会計事務所3名,企業2名,大学・投資機関各1名になっている。理事会は正式に5人委員会の構成を提案していないが,会計事務所3名,企業・大学・投資機関各1名による構成を考慮した。

 〈採択の要件〉 当初会計基準を採択するために必要な票数は5分の2であり,それはFASBの会計基準が一般に認められ論争の少ないものにするために適切であると考えられた。また,単純過半数では会計事務所出身者4名が同一行動を取ると他の委員の意見が通らなくなることも考慮された。理事会は1977年に会計事務所出身者の委員を3名に変更するとともに要件を単純過半数に変更して基準設定の促進を図った。しかし,単純過半数は会計基準が一般に認められるための障害になると考えられ、1989年に5分の2の絶対過半数に戻された。現理事会は,委員会構成人員が5人であるならば,単純過半数が適切であると考える。

 〈コメント期間の短縮〉 公開草案に対するコメント期間は従来60日以上で多くの場合90日以上としていたが,これを60日以下とする。

 要約すると,理事会は,FASB委員を5人に減員し,3分の2の単純過半数を基準採択の要件とし,コメント期間を短縮するよう提案している。求める意見には委員会の構成に関する意見を含む。この提案に対して4月17日までに提出された意見書は,4月23日に開催予定の理事会で検討するよう理事会は計画している。

 

東証、新興企業向け市場「マザーズ」の退出ルール強化

 東京証券取引所は、さる3月19日、マザーズの上場制度の改正要綱を公表した。マザーズは、平成11年にわが国初の新興企業向け市場として開設されたが、「ITバブルの崩壊」や一部の上場会社の不祥事発生により、市場イメージの低下を招き、新規上場会社数が36社(うち、1社は市場第2部へ変更上場)と伸び悩んでいる。今回の見直しのポイントは2点であり、「退出ルールの強化による市場の信頼性の回復・向上」と、上場促進という観点から「上場資格に関する誤解の解消」、「不必要な資金調達の抑止」などを図るという点である。改正要綱の主な内容は以下のとおりである。

 上場廃止基準関係では、1点目は、売上高に係る基準の新設である。これは、ビジネスモデルの脆弱な会社の退出を図るという観点から、売上高をメルクマールとして、「最近1年間における売上高が1億円に満たず、利益も計上されていない場合には、上場廃止とする」という内容である。また、情報開示の充実を図る観点から、上場直前期の売上高が1億円に満たない場合には、上場日に、今後の事業計画の概要を開示するというものである。

 2点目は、時価総額に係る上場廃止基準の新設である。これは、市場の評価を極端に失った会社の退出を図る観点から、「時価総額が5億円に満たないこととなった場合において、一定の猶予期間内に時価総額が5億円を回復しないときは、上場廃止とする」という内容である。この場合の「猶予期間」は、3か月間、または経営改善プランが提出された場合には9か月間としている。なお、市場全般の需給環境が急激に悪化した場合には、同基準の適用を中止する措置も設けることとした。

 また、この時価総額に係る上場廃止基準の新設に伴い、新規上場時の時価総額基準については、上場物件の安定性を確保する観点から、現行の「5億円以上」を「10億円以上」に引き上げることとしている。

 上場審査基準関係では、1点目は、「上場対象がIT関連業種に限られているのではないかといった誤解を解消する」観点から、「新規事業性」に係る要件を撤廃し、「高い成長可能性」を有していれば足りることとした。

 2点目は、公開株式数に係る基準について、新規上場会社に必要以上の資金調達を行わせている一因となっている面があるとの指摘などを踏まえ、1,000単位以上の公募を求めているものを、最低500単位の公募が行われ、売出し分とあわせて1,000単位以上となれば上場を認めるというものである。

 その他、変更上場の際の開示に係る上場審査の合理化として、マザーズから市場第一部・第二部への変更上場に際しては、マザーズにおける開示実績を勘案して上場審査を行うこととしている。

 改正制度の実施時期は、規則改正手続きを経て、5月初旬を予定している。

東証、アドバイザリー・コミッティーを設置

 東京証券取引所は、さる3月19日、名称「アドバイザリー・コミッティー」の設置について公表した。「アドバイザリー・コミッティー」とは、上場会社、機関投資家および学識者等の関係者の間で、同取引所および証券市場全般に関し幅広く意見交換をする場とした社長の私的懇談会であり、26日、第1回目が開催された。

【本件についての問合せ先】

株式会社 東京証券取引所 総務部総務グループ

 宮原(03−3665−1213 内線2241)

<アドバイザリー・コミッティー委員一覧>

荒木 浩 東京電力且謦役会長

池尾和人 慶應義塾大学経済学部教授

伊藤邦雄 一橋大学大学院商学研究科教授

櫻井孝頴 第一生命保険g相取締役会長

高原慶一朗 ユニ・チャーム且謦役会長

竹内佐和子 東洋大学教授 都市デザインセンター長

寺島実郎 財日本総合研究所理事長,且O井物産戦略研究所所長

西川善文 且O井住友銀行取締役頭取

西室泰三 鞄月ナ取締役会長

宮内義彦 オリックス且謦役会長

室伏 稔 伊藤忠商事且謦役会長

(五十音順,敬称略)

 

証券市場に波紋呼ぶABS

 昨年9月のマイカルの破綻が証券市場に影響を与え続けている。マイカルの主要店舗の賃貸契約を裏付け資産としたABS (資産担保証券)のしくみが、当初の想定に反して、マイカルの破綻の影響を被ったのがそれである。

 破綻直後、マイカルが発行した普通社債や、マイカルの入居保証金を裏付け資産としたABS がデフォルトに陥った。普通社債がマイカルの破綻によってデフォルトするのはほぼ必然である。

 また、入居保証金にもとづくABS は証券化のしくみが不完全であり、マイカルの保証によって信用リスクを補完するという、普通社債に類似した商品であった。このため、このABS のデフォルトも当然だと市場は評価していた。

 他方、マイカルの優良店舗の賃貸契約を裏付け資産としたABS は、1999年と2000年に発行されたものであり、証券化商品として綿密に仕組まれていた。すなわち、マイカルの保有していた店舗が証券化の目的のために真正に売買される一方で、その店舗をマイカルが賃借し、賃借料がABS の利払いに充当されるしくみになっていた。なお、このABS の満期資金はリファイナンスによって調達される予定であり、リファイナンスできない場合には証券化の対象となった店舗が売却されることとされている。

 以上のしくみによって、このABS はマイカルの破綻から隔離され(いわゆる倒産隔離の状態にあり)、発行当初の格付け(最優先証券はAAA )を保っていた。しかし今年の2月になってマイカルの管財人が、証券化の目的で売却された店舗の賃借料もマイカルの更生手続きの対象になると判断した。その後、管財人とABS の資産管理会社の間で賃借料の引き下げが合意されたと報じられている。この合意によって証券化のしくみは維持される見込みであるが、一方でABS がマイカルの破綻から完全に隔離されていないと事実上確認されてしまった。

 1998年の日本リースの破綻は、日本リースのリース債権を裏付け資産として発行されていたABS の真正売買と倒産隔離を確認することで投資家の安心感を生み出し、その後のABS 市場の発展に寄与したとされている。それに対して今回のマイカルのABS をめぐる決着は、投資家にとっては新たな不安材料をもたらしたことになる。

 銀行の信頼性が揺らいでいることから、証券市場の発展が急務とされる。それだけに、今回の事件がABS市場の縮小をもたらし、証券市場の発展を阻害しないかどうかが懸念される。

 

あるべき税制についての検討――政府税制調査会

 政府税制調査会(首相の諮問機関,会長:石弘光一橋大学学長)は,例年になく,年明けより総会および基礎問題小委員会を開催し,あるべき税制の構築に向けた検討を進めている。

 1月17日の第23回総会では,小泉内閣総理大臣より,「21世紀のあるべき税制の構築に向けて,広く税制上の課題について,広い角度から,積極的に取り組んでほしい」旨の挨拶があり,石会長からは,「総会とあわせて,基礎問題小委員会を早々に開始し,経済財政諮問会議との連携も図りつつ,具体的な議論を進め,夏前に基本的な考え方をとりまとめたい」との発言があり,了承された。

 2月1日には,第5回基礎問題小委員会が開催された。この日は,石小委員長より,税調の今後の審議の進め方について,「本年6月頃を目途に,あるべき税制の構築に向けての基本的な方針をとりまとめ,その後,この基本的な方針の下で15年度税制改正に盛り込むべき事項についての考え方の整理を行っていきたい」旨の発言があり,主な論点等についての説明があった。

(参考)

あるべき税制を考える際の主な論点

■ 租税の役割

■ 「税の空洞化」への対応

 ――課税ベースのあり方等

■ 受益と負担のあり方

■ 税制と経済の活性化

 ――21世紀型税制

■ 経済社会の構造変化への対応

 ・ 少子・高齢化

   →世代間の公平,持続可能な社会保障制度等

 ・ ライフスタイルの多様化

   →日本型雇用慣行の変化,男女共同参画等

 ・ グローバル化・国際化

   →経済の国際化に伴う取引の多様化・複雑化等

 ・ 情報化

   →電子商取引の進展,電子政府の実現等

 ・ 経済のストック化

   →個人金融資産の蓄積,金融取引の多様化等

 ・ 環境問題

   →地球温暖化等

■ 地方分権時代にふさわしい地方税のあり方

 2月15日には第6回基礎問題小委員会が,2月19日には第24回総会が,3月5日には第7回基礎問題小委員会が,3月19日には第8回基礎問題小委員会が開催され,「経済社会の構造変化の状況」,「日本経済と税制の役割」,「財政及び税制の現状」,「レーガン税制」,「サッチャー税制」,「IT化と税制」,「国際化と税制」などについての審議が行われている。

 

商法改正法律案、今通常国会に上程

  3月15日、「商法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、開催中の今国会に上程された。

  本法律案の主要項目としては以下があげられる。

  まず、機関関係では、取締役会に監査委員会等を設置し、従来の取締役会に変わって業務を執行する「執行役」を選任することにより監査役を廃止することを認める「委員会等設置会社制度」が機関関係を抜本的にあらためるものとして注目される。

  また、計算関係では株式会社の会計帳簿に記載または記録すべき財産については、34条に規定に係わらず、法務省令に定めるところによりその価額を付さなければならないものとし、商法上の規定を削除している。また、貸借対照表等の記載事項および記載方法や配当可能限度額および中間配当限度額の算定についても、同様に法務省令に委任している。

  さらに、大会社については、当該会社と法務省令で定める連結子会社で構成される企業集団につき、連結計算書類の作成が義務づけている。詳細は法務省令で定めることとされており、また、これを義務づけられる大会社は当分の間証券取引法にもとづく有価証券報告書提出会社に限定されるとしている。

  本法律案は、今通常国会で成立すれば、今秋にも施行が見込まれる。

 

商法施行規則の公布

  先般パブリック・コメントとして公表されていた平成13年商法改正等にともなう「商法施行規則(案)」が、3月29日付の官報により公布された。

  本省令は、計算書類規則、参考書類規則、監査報告規則等を統合し、さらに平成13年11月改正の会社関係書類の電子化に関する規定を盛り込んだもの。

  内容としては、特に69条で、資本の部を資本金、資本剰余金、利益剰余金に区分するなど従来の商法の資本概念を変更している点が注目される。

  なお、省令本文は、次号掲載予定。