▽三角波△

連結納税制度と税効果会計

 

  連結納税制度の創設に関する法人税法の改正法案は、現在、昼夜兼行の策定作業が進められており、5月中旬には、国会に提出されるものと見込まれている。極めて限られた時間の中で法人税法を書き下ろすといってもよい作業を進めている財務省スタッフには本当に頭の下がる思いがする。
 1月に閣議決定された「平成14年度税制改正の要綱」を手がかりに、連結納税制度の導入に伴う企業会計への影響について整理したい。
企業会計上の論点
 連結納税制度の創設に伴う企業会計処理については、(財)財務会計基準機構(FASF)が運営する企業会計基準委員会(ASB委員長:
斎藤静樹東京大学教授)で検討が進められている。
 連結納税制度の適用を開始した企業については、法人税等に関する企業会計上の処理についても、その影響を受けることになるが、重要な論点としては、@法人税等の計上方法、A連結税額の連帯納付責任、そしてB税効果会計への影響が挙げられよう。
 まず、連結納税制度の下では親会社が「連結所得に対する法人税の申告および納付を行う」ことから、まず、親会社の貸借対照表の負債の部に連結税額を「未払法人税等」として計上し、損益計算書においては、同額を「法人税等」として税引前当期利益金額から控除する形式で表示することが考えられる。また、連結税額は「連結グループ内の各法人の個別所得金額又は個別欠損金額を基礎として計算される金額を基にして配分」されるため、各子会社においては、配分された連結税額を「法人税等」として計上する必要が生じるものと考えられる。
 次に、子会社は「連結所得に対する法人税について連帯納付責任を負う」ことから、連結税額全額について偶発債務に関する注記が必要になるものと考えられる。
税効果会計への影響
 連結納税制度の適用に伴う影響でもっとも重要なのは税効果会計への影響である。
 まず、連結グループ内の資産の取引に係る譲渡損益については課税が繰延べられることから、個別財務諸表上で認識された取引に係る譲渡損益課税との差額に対応する繰延税金資産・負債を計上する必要が生じる。
 連結ベースで生じた連結欠損金は単体課税と同様に5年間の繰越が可能であるが、当該欠損金額は、個別法人ごとの帰属額が計算されることとなっている。したがって、個別財務諸表上では、連結欠損金の個別帰属額について、その連結グループ全体での控除可能性を評価しつつ繰延税金資産を計上することが考えられる。
 連結納税制度の適用開始あるいは連結納税グループへの加入にあたっては、子会社の連結開始前(あるいは加入前)の繰越欠損金は、「連結納税制度の下で繰越控除」(要綱)することはできないため、繰越欠損金を有する子会社がその個別財務諸表上繰延税金資産を計上して、連結開始に伴い取り崩す必要があるのではないかと考えられる。しかし、子会社の連結前の欠損金は、あくまでも「連結納税制度の下で」繰越控除が否認されているだけであり、当該子会社が、連結グループから離脱し、単体納税制度に復帰した場合には、繰越控除が可能であるという解釈も十分成り立つと考えられ、必ずしも繰延税金資産を取崩す必要はないとも考えられる。この点については、子会社がその連結前の欠損金を連結グループ離脱後に単体ベースで繰越控除できるのか否かについての法人税法上の取扱いが明らかになることが鍵となろう。

〈Y.O 〉