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ASB,「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」を検討

企業会計基準委員会(以下,「ASB」)は,さる1月31日,ASBの適用指針第1号として「企業会計基準適用指針第1号 退職給付制度間の移行等に関する会計処理」(以下,「適用指針」)を発表した。これは,確定給付企業年金法及び確定拠出年金法の制定を受け、退職給付制度間の移行又は退職給付制度の改訂等により退職給付債務が増加又は減少した場合の会計処理について,実務対応専門委員会(以下,「委員会」)において検討されてきたものである(同適用指針の全文を,本号別冊付録にて収録している)。

さらに同委員会では,さる2月28日,実務対応報告公開草案第2号「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」(以下,「公開草案」)が公表された。意見募集期間は,平成14年3月18日までとなっており,概要は以下のとおり。

1   退職給付制度の終了の時点(Q1〜Q3)

@  退職給付制度廃止の場合→退職給付制度の廃止日

A  退職給付制度間の移行又は制度の改訂により退職給付債務がその減少分相当額の支払等を伴って減少する場合→改訂規程等の施行日

施行日または廃止日が翌期になる場合でも規程等の改訂が当期中に行われ、終了損失の発生可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合は、当該終了損失の額を当期の退職給付費用として計上し、退職給付引当金を増加させる処理を行う必要がある。

2 「併せ給付」の場合、退職一時金を廃止するが退職時支払の場合及び閉鎖型年金に移行する場合の会計処理(Q4、Q5)

終了に該当するものとして終了損益を計上し、当該移行部分に対応する部分は移行前の部分が名目的にしか引き継がれていないものとして年金資産と退職給付債務を計上する。

3 退職給付債務の増額又は減額の測定時点(Q6)

退職給付制度間の移行による退職給付債務の増額又は減額の場合も、過去勤務債務として規程等の改訂日現在で測定される。

4 確定拠出年金制度における会計処理(Q7)

退職給付費用として発生基準に計上。退職給付費用の内訳の「その他」として注記することが妥当である。

5 経過措置適用による退職給付引当金残高の借方残額の会計処理(Q8)

退職一時金から確定拠出型へ全部又は一部移行する際,適用指針第15項の経過措置を適用した結果、退職給付引当金が借方残高となった場合、未払金に計上した分割拠出の額と相殺表示の必要はなく、前払年金費用として資産計上される。

ASB 、自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準等を発表

企業会計基準委員会(ASB)は、さる2月21日、企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」,企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針」,企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」について公表した。

これは,平成13年6月及び11月の商法改正を受け、自己株式及び法定準備金の取崩等の会計処理について検討されてきたもの。概要は以下のとおりである。

〈資本の部の区分〉

資本の部を資本金、資本剰余金、利益剰余金及びその他の項目に区分し、資本剰余金を資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金を利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益に区分する。

〈自己株式の会計処理及び表示〉

・ 自己株式の取得及び保有

従来資産の部に計上されていたが,取得した自己株式は、取得原価をもって資本の部から控除される。また,期末に保有する場合は、資本の部の末尾に自己株式として一括して控除する形式で表示することとする。

・ 自己株式の処分

自己株式売却損益は、損益計算書の営業外損益に計上されていたが、自己株式処分差益は、その他資本剰余金に計上,自己株式処分差損は、その他資本剰余金から減額し、減額しきれない場合は、利益剰余金のうち当期未処分利益から減額することとする。

・ 自己株式の消却

減額する資本項目(その他資本剰余金、当期未処分利益)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従い、消却手続が完了したときに会計処理する。

〈資本金及び法定準備金の取崩の会計処理及び表示〉

・ 資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金

資本金の取崩による減資差益は資本準備金に計上されてきたが、商法改正により資本準備金に計上されなくなった。また、資本準備金の取崩は、商法改正で制度化された。よって,生ずる剰余金は、取崩の法的手続が完了したときに、その他資本剰余金に計上する。

・ 資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止

資本剰余金の各項目は利益剰余金の各項目と混同してはならなず、資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない。その他資本剰余金の処分額は、当期未処分利益の処分額と混同してはならない。

〈開示〉

その他資本剰余金の処分を行った場合、個別財務諸表における利益処分計算書には、当期未処分利益の処分に加え、その他資本剰余金の処分を設ける。利益処分計算書の表示は以下の例によるものとされる。

 

〈適用時期及び経過措置〉

本会計基準及び適用指針は、平成14年4月1日以後適用する。資本の部の区分及び開示に関しては、平成14年4月1日以後開始する事業年度等から,平成14年3月31日以前に開始する事業年度等で平成14年4月1日以後に終了する事業年度等においては、早期適用が望ましい。

なお,本号別冊付録に全文を収録している。

 

FASB議長の連邦議会小委員会での証言

FASB議長ジェンキンズ氏は,さる2月14日にエネルギー・商業委員会の小委員会で,エンロン破産に関連して大要次のような証言を行った。

米国の会計基準は一般に世界で最も高い品質の基準として認められているが,FASBはその基準を強制する権力を有していない。財務諸表が会計基準に準拠することを確保することは,報告企業の取締役・役員,監査人およびSECの責任である。FASBは,監査人の監査,独立性またはサービスの範囲について権力も責任も有していない。FASBの責任は,財務会計・報告基準の設定に限られている。

FASBはエンロンの会計報告に関連する事実の多くを知らないが,エンロンはその臨時報告書により,その財務諸表が少なくとも二つの領域で現行の会計上の要求に準拠しておらず,その結果1997年から2000年の資産と利益を過大表示し,負債を過小表示したことを認めている。そのうち,2特別目的企業との取引の会計処理は,取引の構成または基礎的な会計処理について明かに間違っていた。また他の場合には,基礎的な事実のない取引の複雑な構成を通じて会計原則を回避する創造的努力をしたが,しかもなお,その会計処理は間違っていたと思われる。

FASBは,エンロン破たんの結果生じ得るすべての会計・報告上の問題を速やかに解決する用意があり,また任務があることを保証する。FASBは,現行の要求を改善するいくつかのプロジェクトを進行中だが,それには連結会計の改善と金融商品の公正価額の決定指針が含まれている。前者には特別目的企業の連結問題を含んでおり,審議に相当の期間を要しているが,今年の第2四半期中には公開草案を発行する計画である。

FASBは,基準設定活動の速度に懸念があることを理解しており,正当な手続の公開性と綿密性を危険にさらさせずに審議会の効率性と有効性を増進する。

資本市場で資金調達をする企業は,会計基準の要求の言葉遣いだけではなく,その要求の明瞭な意図にも忠実に会計基準を適用しなければならない。会計基準の言葉遣いや意図をめぐる抜け穴を探すことは報告をわかりにくくし、投資家に損害を与える。監査人も会計基準が明瞭に禁止していないことのみによって,企業の安易な議論を受け入れるべきではない。SECも投資家保護のために報告企業が基準の言葉遣いと意図に従った情報を提供し,監査人が適切かつ十分監査したことを確かめなければならない。

エンロン破たんからの教訓があるとすれば,透明な財務会計・報告が重要であり,それが欠けると資本市場への参加者に大きな損害を与えるということである。

リース会計基準の一部改訂の提案

FASBは,去る2月に基準書第13号リース会計第14項aを改訂し,キャピタル・リースからオペレーティング・リースに契約を変更した場合には,リースバック取引として取り扱う改訂を基準書第4,44,64号の廃止提案(企業会計1月号参照)に含めることを提案し,期限を3月18日として意見を求めている。

 

日本公認会計士協会,「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」について公表

日本公認会計士協会(業種別監査委員会)は、さる2月13日,業種別監査委員会報告第24号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」(以下,「報告」)について発表した。

これは,以前,業種別監査委員会から答申があった「業種別監査委員会報告第24号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」が,同日の理事会において承認されたものである。

またこの答申は,平成13年4月17日付け総13第9号による諮問「業種別監査委員会報告第15号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」の見直しについて検討されたい。」に対するものであった。

これは、業種別監査委員会報告第15号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」(以下,「旧報告」という)が、平成14年3月31日に終了する事業年度までの暫定的な処理を定めた当面の取扱いであったため、業種別監査委員会において、平成14年4月1日以後開始する事業年度および中間会計期間から適用するヘッジ会計等の新たな会計処理について諸外国におけるヘッジ会計の動向に意を払いつつ、かつ「金融商品に係る会計基準」および「金融商品会計に関する実務指針」(以下,「実務指針」という)に軸足を置きながら検討を行い、業種別監査委員会報告第24号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」として取りまとめたもの。

同報告は銀行業を対象としているものの、信用金庫等の協同組織金融機関等においても適用することが可能であり,旧報告との相違点は以下のとおりとなっている。

1 いわゆるリスク調整アプローチによるマクロヘッジの取扱いを廃止したこと

2 ヘッジ会計の適用においては、ヘッジ対象である金融資産及び金融負債のそれぞれとヘッジ手段との明確な対応を求めることとしたこと

3 株価指数先物取引等による包括ヘッジについては、実務上の利用例がないため廃止したこと

ただし、銀行業における業種特有のリスク管理手法や取引慣行等を考慮し、以下の点については実務指針を適用する際に留意すべき事項等が示されている。

@ ヘッジ会計(包括ヘッジ)の具体的適用

A 連結会社間取引及び内部取引の取扱い

B 割引手形の取扱い

なお,適用期間は、平成14年4月1日以後開始する事業年度及び中間会計期間からとなっているが、システム等の実務対応ができない銀行を考慮に入れ、旧報告の1年延長の経過措置が設けられている。

また,同報告は関係各方面との意見調整を経たものであり,また新たに合理的で高度なヘッジ手法の開発等が行われた場合は、それに応じ、将来、いずれかの担当機関において、本報告の内容の見直しを行うことも必要と考えられている。

 

東証、平成13年9月中間期の中間連結決算発表状況の集計結果を公表

東証は、平成13年9月中間決算発表を行った1,691社(3月期決算会社1,693社に、決算期変更による変則決算会社2社を加え、10月1日以降に上場廃止の決定により発表を行わなかった会社4社を除いた社数)の中間連結決算発表状況の集計結果を公表した。今回は、証券取引法上のディスクロージャー制度において中間連結決算が義務づけられて2年目となり、中間連結決算発表会社数が増加するとともに、個別中間決算と連結中間決算の同時発表会社数も大幅に増加した。

なお,概要は以下のとおりである。

まず、中間連結決算発表会社数は、前年の1,504社から60社増加して、1,564社となり、9月中間決算発表会社1,691社に占める割合は92.5%(前年92.2%)であった。

また、中間決算期末から中間連結決算発表までの平均所要日数は、前年比2.2日短縮され、48.7日となった。この要因としては、10月中に発表した会社が前年比で29社増加する一方で、12月に発表する会社が63社減少したことなどを挙げられる。所要日数の分布状況は、30日以内が109社(前年77社)、30日超〜40日以内161社(同112社)、40日超〜50日以内415社(同341社)、50日超〜60日以内832社(同842社)、60日超47社(同132社)であり、50日超〜60日以内での発表会社が半数を占めていた。

中間連結決算と個別中間決算を同時に発表した会社数は、前年の1,315社から165社増加して1,480社となり、連結中間決算発表会社全体に占める割合も前年から7.2ポイント増加して94.6%となった。また、個別中間決算発表との乖離日数が1日以上〜7日以内7社(前年10社)、7日超〜14日以内22社(同52社)、14日超〜21日以内が25社(同49社)、21日超が30社(同78社)となり、乖離状況は大幅に改善した。

その一方で、中間連結決算発表の日については、今回も特定日への集中が見られた。具体的には、最も発表が集中した週は、11月第4週(19日〜22日)であり、中間連結決算発表会社全体の42.0%を占める656社が発表を行った。また、最も集中した日は、11月22日(木)であり、全体の16.6%の260社が発表を行った。なお、昨年の最集中日での発表会社数は220社(構成比14.6%)であった。

所要日数20日以内の早期発表会社は、アドヴァン(3日)、ホギメディカル(10日)、京都きもの友禅(16日)、メッツ(17日)、KOA(17日)、日信工業(17日)、日立機電工業(18日)、日立ハイテクノロジーズ(19日)であった。

 

経済財政諮問会議,デフレへの総合対策をまとめる

2月、政府の経済財政諮問会議はデフレへの総合対策をまとめた。その内容は、銀行対策(金融庁による厳格な特別検査の実施と結果の公表による不良債権処理の加速、公的資本注入の検討)、日銀に対する一段の金融緩和の要請、株価への対策が柱となっている。

デフレへの総合対策が打ち出された目的の一つは、株価の下落圧力が強まっていることへの対応にある。銀行に対する不安心理を静め、同時に株式の売却圧力を緩和させることによって、デフレ心理を緩和させることに狙いがある。

東証株価指数は2月に920台に下落し、1985年初の水準に戻った。この1年間で30%の値下がりである。とりわけ銀行株では、4大銀行グループの一角が1年間に最大70%も値下がりした。この銀行株の下落は企業業績を大きく下振れさせる。というのも、50%を超える株価下落が原則として会計上の減損対象になることと、銀行株が株式持ち合い構造の中核的な位置づけにあったためである。

このように株価の下落が企業業績を悪化させるわけだが、すぐさま予想されるのは、その企業業績の悪化がさらに株価を下落させるという悪循環である。従来のように銀行や企業が株式に多額の含み益を有していたのならともかくも、含み益のなくなった現在、株価の下落は株式の評価損に直結する。1997年以降、2000年を除いて、3月の決算期末が近づくと株価の下落傾向が強まるのは、株式の評価損を回避するために銀行や企業が株式の売りニーズを強めることと、それを予測した投機的な売りが生じるためである。

そのため、今回のデフレへの総合対策では、株式市場に対して次の措置を講じることとしている。

一つは、株式の空売り規制の強化である。株式を保有せずに売却することを空売りと言うが、その場合、売り対象となる株式を株主から借りなければならない。今回の規制強化は、「株価が値下がりしている場合、直前の株価よりも高い価格でしか空売りできない」こととした。従来は同値での空売りが認められていたことと比較すると、売り浴びせの禁止措置が強化されたことになる。また、金融庁は証券会社を空売り規制違反で相次いで摘発しているし、株式の貸借に対する調査を綿密に行おうとしている。

もう一つは、銀行が株式を売却する場合の受け皿である「銀行等保有株式取得機構」の活用である。機構には、3月末までに2兆円、来年度前半までにさらに2兆円、合計4兆円の政府補償による借入枠を準備し、銀行の株式売却を促すこととした。

これらの具体策により、株価の下落を阻止し、銀行や企業経営の安定化を目指すことになる。当面の株式市場は、これらの措置の有効性にかかっていよう。

 

法務省、平成13年商法改正等に伴う「商法施行規則」制定に関するパブリック・コメントを公表

昨年の第153回国会において、種類株制度の緩和、新株予約権制度の創設および会社関係書類の電子化等を盛り込んだ、「商法等の一部を改正する法律」(平成13年法律第128号、以下「11月改正」という)が11月23日に公布され、本年4月1日から施行される。

また、同国会では、昨年の通常国会から継続審議となっていた、監査役の権限強化、取締役等の責任軽減や株主代表訴訟制度の合理化等が盛り込まれた、「商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律」(平成13年法律第149号、以下「12月改正」という)が、12月12日に公布され、公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。

これらの改正により、@株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則(計算書類規則)、A大会社の監査報告書に関する規則(監査報告書規則)、B大会社の株主総会の召集通知に添付すべき参考書類等に関する規則(参考書類規則)、C株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則の特例に関する省令(特例省令)について、一部を改正する必要が生じてきた。

また、近時の商法改正他の関係法令の改正に伴い、商法32条2項の「公正ナル会計慣行」に関連して、貸借対照表の資本の部の記載方法についての会計基準が新たに形成されており、これにあわせて計算書類規則の一部を改正する必要が生じていた。

そこで、法務省はこれらに必要に対応するため、またこれを機会に上記の@〜Cまでの省令を整理・統合して「商法施行規則」とし、必要な規定を整備することを検討しており、先般これについてのパブリック・コメントを公表した。

本パブリック・コメントは、3月11日に締め切られ、所定の手続を経た後、翌月4月1日より施行される予定である。これにより、既存の上記@〜Cの省令は廃止される。

なお、この「商法施行規則」の構成およびポイントは以下のとおり。

〈目次〉

第一章  総則

第二章  電磁的記録等

第三章  株主総会の召集通知に添付すべき参考書類等

第四章  株式会社の貸借対照表等の記載又は記録の方法

第五章  大会社の監査報告書

第六章  商法第406条ノ3第1項の届出

附則

〈ポイント〉

1 第二章関係 11月改正により認められた会社関係書類の電子化等に伴い、政令に委任を受けた事項についてその細目を定める。

2 第三章関係 現行の参考書類規則に該当。11月改正および12月改正により株主総会の決議に際して開示すべき事項が増えたことへの対応等。

3 第四章関係 現行の計算書類規則および特例省令に該当。@企業会計における資本と利益の区別との考え方に対応するため、貸借対照表の資本の部の表示方法を変更し、従来の資本金、法定準備金および剰余金という区分から、資本金、資本剰余金および利益剰余金という区分にすることとし、またこれに伴って、資本の欠損が生じている場合にはその額を注記しなければならないこととする。A11月改正により創設された新株予約権については、従前の新株引受権付社債による新株引受権および改正前の新株引受権と実質的に同様であることから、同様に資本の部の注記事項とする。

4 第五章関係 現行の監査報告書規則に該当。11月改正による会社関係書類の電子化への対応が中心。

また、本年2月13日に法制審議会総会にて決定され、本通常国会にて改正が予定されている「商法等の一部を改正する法律案」において、計算関係規定については、

@会計帳簿における財産の価額の評価方法、

A貸借対照表等の記載事項および記載方法、

B配当可能限度額及び中間配当可能限度額の算定、

について商法の規定が削除され、法務省令をもって定めるものとする改正が予定されている。

また、大会社についての連結計算書類の導入についても法務省令で定めるとしていることから(改正法律案要綱は本号別冊付録参照)、上記「商法施行規則」がこれらの改正を盛り込んだ形で施行日にあわせて改正される見通し。

 

租税特別措置法等の一部を改正する法律案,2月1日国会提出

平成14年度の税制改正の具体的内容については,1月17日に「平成14年度税制改正の要綱」が閣議決定されていたが,平成14年度税制改正法案のうち,「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」については,さる2月1日に閣議決定され,同日国会に提出された。

本法律案は,社会経済情勢の変化や厳しい財政状況を踏まえつつ,構造改革に資する等の観点から,中小企業関係税制および金融・証券税制等につき所要の措置を講ずるものである。

具体的には,

・ 中小企業関係税制について,同族会社の留保金課税の特例の拡充,交際費の損金不算入制度に係る定額控除限度額の引上げ等を行う

・ 金融・証券税制について,老人等の少額貯蓄非課税制度を障害者等を対象とした制度に改組するほか,特定口座内の上場株式等の譲渡等に係る申告不要の特例制度の創設等を行う

・ 社会経済情勢の変化に対応するため,中高層耐火建築物等の所有権等の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置,金融業務特別地区における認定法人に係る所得の特別控除制度の創設等沖縄の経済振興のための措置等を講ずる

・ その他,製品輸入額が増加した場合の特別税額控除制度の廃止等既存の特別措置の整理合理化を行うとともに,特別国際金融取引勘定に係る利子の非課税制度等期限の到来する特別措置についてその適用期限を延長する等所要の措置を講ずる

ことを内容としている。

なお,平成14年度税制改正事項のうち,連結納税制度を創設すること等を内容とする「法人税法等の一部を改正する法律案」については,その準備作業が複雑かつ膨大であるため,法案の提出は5月上中旬になるものと見込まれている。

 

日本監査役協会,「商法等の一部を改正する法律案要綱」に対する協会意見を法務省へ提出

日本監査役協会は、さる平成14年2月19日、「商法等の一部を改正する法律案要綱」に対する意見を法務省民事局参事官室へ提出した。

同協会では、今回の商法改正要綱に対してどのような形で意見を述べるべきかについて、監査法規委員会で検討を行ってきた。その結果、下記の内容で法務省に対する意見表明を行うことを2月14日の常任理事会に付議し,承認を得た。

なお、協会から各界へ建議・具申を行う場合は理事会に諮ることとなっているが、今回の意見内容は中間試案段階で述べた意見と本質的に変わらないこと、法制審議会総会以降,ただちに立法作業が開始されていることに鑑み、理事会メンバーに対しては常任理事会の同意の下に法務省への提出前に事情を述べ意見内容を送付し、了承を求める手続をとることとした。

意見書の全文は,以下のとおり。

 

「商法等の一部を改正する法律案要綱」に対する意見

社団法人日本監査役協会

当協会の意見は、昨年4月24日付で法務省民事局参事官室から照会された「商法等の一部を改正する法律案要綱案中間試案」に対する6月6日付意見書(抜粋添付)にて申し上げた通りであります。

なお、今般法制審議会が2月13日に決定した標記要綱につきまして、少なくとも下記事項についてご配慮賜りますよう重ねてお願いする次第です。

監査委員会制度については、監査役制度に代替させるものとして想定されていると思われるが、下記の点で現行の監査役制度よりも監査品質が低下する懸念があるので、そのような懸念が現実のものとならぬよう配慮願いたい。

1 一部自己監査となる。

取締役をメンバーとする監査委員会の監査は、主として執行役の業務執行を対象とするものではあるが、取締役の職務執行も監査対象に含まれることから、一部「自己監査」となり、監査に対する客観性と信頼性を低下させる懸念がある。

そこで、監査委員会のメンバーとなる者は、自己監査の弊害を招かぬように、高い精神的独立性を保ち、厳正な監査に努めなければらないことを周知徹底する必要がある。

2 常勤者による監査等の措置が必要である。

現行の監査役制度は常勤制が採られ、監査役は取締役会、経営会議等重要会議への出席他を通じて情報収集を行い、会社の意思決定のプロセスを日常的に監査し、リスクの発見・未然防止を図っている。監査委員会に常勤の取締役を置かない場合は、こうした監査に必要な情報収集力を低下させ、監査品質が低下する懸念がある。

監査品質の低下を防止する観点から、取締役会で決定しなければならないとされている「監査委員会の職務の遂行のために必要なものとして法務省令で定める事項」(要綱第十一の三の1の(一)の(2))が監査委員会の情報収集を確保・充実させるものとなるよう、法務省令の策定に当たり留意されたい。

 

ASB,「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」を検討

企業会計基準委員会(以下,「ASB」)は,さる1月31日,ASBの適用指針第1号として「企業会計基準適用指針第1号 退職給付制度間の移行等に関する会計処理」(以下,「適用指針」)を発表した。これは,確定給付企業年金法及び確定拠出年金法の制定を受け、退職給付制度間の移行又は退職給付制度の改訂等により退職給付債務が増加又は減少した場合の会計処理について,実務対応専門委員会(以下,「委員会」)において検討されてきたものである(同適用指針の全文を,本号別冊付録にて収録している)。

さらに同委員会では,さる2月28日,実務対応報告公開草案第2号「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い(案)」(以下,「公開草案」)が公表された。意見募集期間は,平成14年3月18日までとなっており,概要は以下のとおり。

1   退職給付制度の終了の時点(Q1〜Q3)

@  退職給付制度廃止の場合→退職給付制度の廃止日

A  退職給付制度間の移行又は制度の改訂により退職給付債務がその減少分相当額の支払等を伴って減少する場合→改訂規程等の施行日

施行日または廃止日が翌期になる場合でも規程等の改訂が当期中に行われ、終了損失の発生可能性が高く、かつその金額を合理的に見積もることができる場合は、当該終了損失の額を当期の退職給付費用として計上し、退職給付引当金を増加させる処理を行う必要がある。

2 「併せ給付」の場合、退職一時金を廃止するが退職時支払の場合及び閉鎖型年金に移行する場合の会計処理(Q4、Q5)

終了に該当するものとして終了損益を計上し、当該移行部分に対応する部分は移行前の部分が名目的にしか引き継がれていないものとして年金資産と退職給付債務を計上する。

3 退職給付債務の増額又は減額の測定時点(Q6)

退職給付制度間の移行による退職給付債務の増額又は減額の場合も、過去勤務債務として規程等の改訂日現在で測定される。

4 確定拠出年金制度における会計処理(Q7)

退職給付費用として発生基準に計上。退職給付費用の内訳の「その他」として注記することが妥当である。

5 経過措置適用による退職給付引当金残高の借方残額の会計処理(Q8)

退職一時金から確定拠出型へ全部又は一部移行する際,適用指針第15項の経過措置を適用した結果、退職給付引当金が借方残高となった場合、未払金に計上した分割拠出の額と相殺表示の必要はなく、前払年金費用として資産計上される。

ASB 、自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準等を発表

企業会計基準委員会(ASB)は、さる2月21日、企業会計基準第1号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」,企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針」,企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」について公表した。

これは,平成13年6月及び11月の商法改正を受け、自己株式及び法定準備金の取崩等の会計処理について検討されてきたもの。概要は以下のとおりである。

〈資本の部の区分〉

資本の部を資本金、資本剰余金、利益剰余金及びその他の項目に区分し、資本剰余金を資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金を利益準備金、任意積立金及び当期未処分利益に区分する。

〈自己株式の会計処理及び表示〉

・ 自己株式の取得及び保有

従来資産の部に計上されていたが,取得した自己株式は、取得原価をもって資本の部から控除される。また,期末に保有する場合は、資本の部の末尾に自己株式として一括して控除する形式で表示することとする。

・ 自己株式の処分

自己株式売却損益は、損益計算書の営業外損益に計上されていたが、自己株式処分差益は、その他資本剰余金に計上,自己株式処分差損は、その他資本剰余金から減額し、減額しきれない場合は、利益剰余金のうち当期未処分利益から減額することとする。

・ 自己株式の消却

減額する資本項目(その他資本剰余金、当期未処分利益)については、取締役会等の会社の意思決定機関で定められた結果に従い、消却手続が完了したときに会計処理する。

〈資本金及び法定準備金の取崩の会計処理及び表示〉

・ 資本金及び資本準備金の取崩によって生ずる剰余金

資本金の取崩による減資差益は資本準備金に計上されてきたが、商法改正により資本準備金に計上されなくなった。また、資本準備金の取崩は、商法改正で制度化された。よって,生ずる剰余金は、取崩の法的手続が完了したときに、その他資本剰余金に計上する。

・ 資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止

資本剰余金の各項目は利益剰余金の各項目と混同してはならなず、資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない。その他資本剰余金の処分額は、当期未処分利益の処分額と混同してはならない。

〈開示〉

その他資本剰余金の処分を行った場合、個別財務諸表における利益処分計算書には、当期未処分利益の処分に加え、その他資本剰余金の処分を設ける。利益処分計算書の表示は以下の例によるものとされる。

 

〈適用時期及び経過措置〉

本会計基準及び適用指針は、平成14年4月1日以後適用する。資本の部の区分及び開示に関しては、平成14年4月1日以後開始する事業年度等から,平成14年3月31日以前に開始する事業年度等で平成14年4月1日以後に終了する事業年度等においては、早期適用が望ましい。

なお,本号別冊付録に全文を収録している。

 

FASB議長の連邦議会小委員会での証言

FASB議長ジェンキンズ氏は,さる2月14日にエネルギー・商業委員会の小委員会で,エンロン破産に関連して大要次のような証言を行った。

米国の会計基準は一般に世界で最も高い品質の基準として認められているが,FASBはその基準を強制する権力を有していない。財務諸表が会計基準に準拠することを確保することは,報告企業の取締役・役員,監査人およびSECの責任である。FASBは,監査人の監査,独立性またはサービスの範囲について権力も責任も有していない。FASBの責任は,財務会計・報告基準の設定に限られている。

FASBはエンロンの会計報告に関連する事実の多くを知らないが,エンロンはその臨時報告書により,その財務諸表が少なくとも二つの領域で現行の会計上の要求に準拠しておらず,その結果1997年から2000年の資産と利益を過大表示し,負債を過小表示したことを認めている。そのうち,2特別目的企業との取引の会計処理は,取引の構成または基礎的な会計処理について明かに間違っていた。また他の場合には,基礎的な事実のない取引の複雑な構成を通じて会計原則を回避する創造的努力をしたが,しかもなお,その会計処理は間違っていたと思われる。

FASBは,エンロン破たんの結果生じ得るすべての会計・報告上の問題を速やかに解決する用意があり,また任務があることを保証する。FASBは,現行の要求を改善するいくつかのプロジェクトを進行中だが,それには連結会計の改善と金融商品の公正価額の決定指針が含まれている。前者には特別目的企業の連結問題を含んでおり,審議に相当の期間を要しているが,今年の第2四半期中には公開草案を発行する計画である。

FASBは,基準設定活動の速度に懸念があることを理解しており,正当な手続の公開性と綿密性を危険にさらさせずに審議会の効率性と有効性を増進する。

資本市場で資金調達をする企業は,会計基準の要求の言葉遣いだけではなく,その要求の明瞭な意図にも忠実に会計基準を適用しなければならない。会計基準の言葉遣いや意図をめぐる抜け穴を探すことは報告をわかりにくくし、投資家に損害を与える。監査人も会計基準が明瞭に禁止していないことのみによって,企業の安易な議論を受け入れるべきではない。SECも投資家保護のために報告企業が基準の言葉遣いと意図に従った情報を提供し,監査人が適切かつ十分監査したことを確かめなければならない。

エンロン破たんからの教訓があるとすれば,透明な財務会計・報告が重要であり,それが欠けると資本市場への参加者に大きな損害を与えるということである。

リース会計基準の一部改訂の提案

FASBは,去る2月に基準書第13号リース会計第14項aを改訂し,キャピタル・リースからオペレーティング・リースに契約を変更した場合には,リースバック取引として取り扱う改訂を基準書第4,44,64号の廃止提案(企業会計1月号参照)に含めることを提案し,期限を3月18日として意見を求めている。

 

日本公認会計士協会,「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」について公表

日本公認会計士協会(業種別監査委員会)は、さる2月13日,業種別監査委員会報告第24号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」(以下,「報告」)について発表した。

これは,以前,業種別監査委員会から答申があった「業種別監査委員会報告第24号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」が,同日の理事会において承認されたものである。

またこの答申は,平成13年4月17日付け総13第9号による諮問「業種別監査委員会報告第15号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」の見直しについて検討されたい。」に対するものであった。

これは、業種別監査委員会報告第15号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」(以下,「旧報告」という)が、平成14年3月31日に終了する事業年度までの暫定的な処理を定めた当面の取扱いであったため、業種別監査委員会において、平成14年4月1日以後開始する事業年度および中間会計期間から適用するヘッジ会計等の新たな会計処理について諸外国におけるヘッジ会計の動向に意を払いつつ、かつ「金融商品に係る会計基準」および「金融商品会計に関する実務指針」(以下,「実務指針」という)に軸足を置きながら検討を行い、業種別監査委員会報告第24号「銀行業における金融商品会計基準適用に関する会計上及び監査上の取扱い」として取りまとめたもの。

同報告は銀行業を対象としているものの、信用金庫等の協同組織金融機関等においても適用することが可能であり,旧報告との相違点は以下のとおりとなっている。

1 いわゆるリスク調整アプローチによるマクロヘッジの取扱いを廃止したこと

2 ヘッジ会計の適用においては、ヘッジ対象である金融資産及び金融負債のそれぞれとヘッジ手段との明確な対応を求めることとしたこと

3 株価指数先物取引等による包括ヘッジについては、実務上の利用例がないため廃止したこと

ただし、銀行業における業種特有のリスク管理手法や取引慣行等を考慮し、以下の点については実務指針を適用する際に留意すべき事項等が示されている。

@ ヘッジ会計(包括ヘッジ)の具体的適用

A 連結会社間取引及び内部取引の取扱い

B 割引手形の取扱い

なお,適用期間は、平成14年4月1日以後開始する事業年度及び中間会計期間からとなっているが、システム等の実務対応ができない銀行を考慮に入れ、旧報告の1年延長の経過措置が設けられている。

また,同報告は関係各方面との意見調整を経たものであり,また新たに合理的で高度なヘッジ手法の開発等が行われた場合は、それに応じ、将来、いずれかの担当機関において、本報告の内容の見直しを行うことも必要と考えられている。

 

東証、平成13年9月中間期の中間連結決算発表状況の集計結果を公表

東証は、平成13年9月中間決算発表を行った1,691社(3月期決算会社1,693社に、決算期変更による変則決算会社2社を加え、10月1日以降に上場廃止の決定により発表を行わなかった会社4社を除いた社数)の中間連結決算発表状況の集計結果を公表した。今回は、証券取引法上のディスクロージャー制度において中間連結決算が義務づけられて2年目となり、中間連結決算発表会社数が増加するとともに、個別中間決算と連結中間決算の同時発表会社数も大幅に増加した。

なお,概要は以下のとおりである。

まず、中間連結決算発表会社数は、前年の1,504社から60社増加して、1,564社となり、9月中間決算発表会社1,691社に占める割合は92.5%(前年92.2%)であった。

また、中間決算期末から中間連結決算発表までの平均所要日数は、前年比2.2日短縮され、48.7日となった。この要因としては、10月中に発表した会社が前年比で29社増加する一方で、12月に発表する会社が63社減少したことなどを挙げられる。所要日数の分布状況は、30日以内が109社(前年77社)、30日超〜40日以内161社(同112社)、40日超〜50日以内415社(同341社)、50日超〜60日以内832社(同842社)、60日超47社(同132社)であり、50日超〜60日以内での発表会社が半数を占めていた。

中間連結決算と個別中間決算を同時に発表した会社数は、前年の1,315社から165社増加して1,480社となり、連結中間決算発表会社全体に占める割合も前年から7.2ポイント増加して94.6%となった。また、個別中間決算発表との乖離日数が1日以上〜7日以内7社(前年10社)、7日超〜14日以内22社(同52社)、14日超〜21日以内が25社(同49社)、21日超が30社(同78社)となり、乖離状況は大幅に改善した。

その一方で、中間連結決算発表の日については、今回も特定日への集中が見られた。具体的には、最も発表が集中した週は、11月第4週(19日〜22日)であり、中間連結決算発表会社全体の42.0%を占める656社が発表を行った。また、最も集中した日は、11月22日(木)であり、全体の16.6%の260社が発表を行った。なお、昨年の最集中日での発表会社数は220社(構成比14.6%)であった。

所要日数20日以内の早期発表会社は、アドヴァン(3日)、ホギメディカル(10日)、京都きもの友禅(16日)、メッツ(17日)、KOA(17日)、日信工業(17日)、日立機電工業(18日)、日立ハイテクノロジーズ(19日)であった。

 

経済財政諮問会議,デフレへの総合対策をまとめる

2月、政府の経済財政諮問会議はデフレへの総合対策をまとめた。その内容は、銀行対策(金融庁による厳格な特別検査の実施と結果の公表による不良債権処理の加速、公的資本注入の検討)、日銀に対する一段の金融緩和の要請、株価への対策が柱となっている。

デフレへの総合対策が打ち出された目的の一つは、株価の下落圧力が強まっていることへの対応にある。銀行に対する不安心理を静め、同時に株式の売却圧力を緩和させることによって、デフレ心理を緩和させることに狙いがある。

東証株価指数は2月に920台に下落し、1985年初の水準に戻った。この1年間で30%の値下がりである。とりわけ銀行株では、4大銀行グループの一角が1年間に最大70%も値下がりした。この銀行株の下落は企業業績を大きく下振れさせる。というのも、50%を超える株価下落が原則として会計上の減損対象になることと、銀行株が株式持ち合い構造の中核的な位置づけにあったためである。

このように株価の下落が企業業績を悪化させるわけだが、すぐさま予想されるのは、その企業業績の悪化がさらに株価を下落させるという悪循環である。従来のように銀行や企業が株式に多額の含み益を有していたのならともかくも、含み益のなくなった現在、株価の下落は株式の評価損に直結する。1997年以降、2000年を除いて、3月の決算期末が近づくと株価の下落傾向が強まるのは、株式の評価損を回避するために銀行や企業が株式の売りニーズを強めることと、それを予測した投機的な売りが生じるためである。

そのため、今回のデフレへの総合対策では、株式市場に対して次の措置を講じることとしている。

一つは、株式の空売り規制の強化である。株式を保有せずに売却することを空売りと言うが、その場合、売り対象となる株式を株主から借りなければならない。今回の規制強化は、「株価が値下がりしている場合、直前の株価よりも高い価格でしか空売りできない」こととした。従来は同値での空売りが認められていたことと比較すると、売り浴びせの禁止措置が強化されたことになる。また、金融庁は証券会社を空売り規制違反で相次いで摘発しているし、株式の貸借に対する調査を綿密に行おうとしている。

もう一つは、銀行が株式を売却する場合の受け皿である「銀行等保有株式取得機構」の活用である。機構には、3月末までに2兆円、来年度前半までにさらに2兆円、合計4兆円の政府補償による借入枠を準備し、銀行の株式売却を促すこととした。

これらの具体策により、株価の下落を阻止し、銀行や企業経営の安定化を目指すことになる。当面の株式市場は、これらの措置の有効性にかかっていよう。

 

法務省、平成13年商法改正等に伴う「商法施行規則」制定に関するパブリック・コメントを公表

昨年の第153回国会において、種類株制度の緩和、新株予約権制度の創設および会社関係書類の電子化等を盛り込んだ、「商法等の一部を改正する法律」(平成13年法律第128号、以下「11月改正」という)が11月23日に公布され、本年4月1日から施行される。

また、同国会では、昨年の通常国会から継続審議となっていた、監査役の権限強化、取締役等の責任軽減や株主代表訴訟制度の合理化等が盛り込まれた、「商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律」(平成13年法律第149号、以下「12月改正」という)が、12月12日に公布され、公布日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。

これらの改正により、@株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則(計算書類規則)、A大会社の監査報告書に関する規則(監査報告書規則)、B大会社の株主総会の召集通知に添付すべき参考書類等に関する規則(参考書類規則)、C株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則の特例に関する省令(特例省令)について、一部を改正する必要が生じてきた。

また、近時の商法改正他の関係法令の改正に伴い、商法32条2項の「公正ナル会計慣行」に関連して、貸借対照表の資本の部の記載方法についての会計基準が新たに形成されており、これにあわせて計算書類規則の一部を改正する必要が生じていた。

そこで、法務省はこれらに必要に対応するため、またこれを機会に上記の@〜Cまでの省令を整理・統合して「商法施行規則」とし、必要な規定を整備することを検討しており、先般これについてのパブリック・コメントを公表した。

本パブリック・コメントは、3月11日に締め切られ、所定の手続を経た後、翌月4月1日より施行される予定である。これにより、既存の上記@〜Cの省令は廃止される。

なお、この「商法施行規則」の構成およびポイントは以下のとおり。

〈目次〉

第一章  総則

第二章  電磁的記録等

第三章  株主総会の召集通知に添付すべき参考書類等

第四章  株式会社の貸借対照表等の記載又は記録の方法

第五章  大会社の監査報告書

第六章  商法第406条ノ3第1項の届出

附則

〈ポイント〉

1 第二章関係 11月改正により認められた会社関係書類の電子化等に伴い、政令に委任を受けた事項についてその細目を定める。

2 第三章関係 現行の参考書類規則に該当。11月改正および12月改正により株主総会の決議に際して開示すべき事項が増えたことへの対応等。

3 第四章関係 現行の計算書類規則および特例省令に該当。@企業会計における資本と利益の区別との考え方に対応するため、貸借対照表の資本の部の表示方法を変更し、従来の資本金、法定準備金および剰余金という区分から、資本金、資本剰余金および利益剰余金という区分にすることとし、またこれに伴って、資本の欠損が生じている場合にはその額を注記しなければならないこととする。A11月改正により創設された新株予約権については、従前の新株引受権付社債による新株引受権および改正前の新株引受権と実質的に同様であることから、同様に資本の部の注記事項とする。

4 第五章関係 現行の監査報告書規則に該当。11月改正による会社関係書類の電子化への対応が中心。

また、本年2月13日に法制審議会総会にて決定され、本通常国会にて改正が予定されている「商法等の一部を改正する法律案」において、計算関係規定については、

@会計帳簿における財産の価額の評価方法、

A貸借対照表等の記載事項および記載方法、

B配当可能限度額及び中間配当可能限度額の算定、

について商法の規定が削除され、法務省令をもって定めるものとする改正が予定されている。

また、大会社についての連結計算書類の導入についても法務省令で定めるとしていることから(改正法律案要綱は本号別冊付録参照)、上記「商法施行規則」がこれらの改正を盛り込んだ形で施行日にあわせて改正される見通し。

 

租税特別措置法等の一部を改正する法律案,2月1日国会提出

平成14年度の税制改正の具体的内容については,1月17日に「平成14年度税制改正の要綱」が閣議決定されていたが,平成14年度税制改正法案のうち,「租税特別措置法等の一部を改正する法律案」については,さる2月1日に閣議決定され,同日国会に提出された。

本法律案は,社会経済情勢の変化や厳しい財政状況を踏まえつつ,構造改革に資する等の観点から,中小企業関係税制および金融・証券税制等につき所要の措置を講ずるものである。

具体的には,

・ 中小企業関係税制について,同族会社の留保金課税の特例の拡充,交際費の損金不算入制度に係る定額控除限度額の引上げ等を行う

・ 金融・証券税制について,老人等の少額貯蓄非課税制度を障害者等を対象とした制度に改組するほか,特定口座内の上場株式等の譲渡等に係る申告不要の特例制度の創設等を行う

・ 社会経済情勢の変化に対応するため,中高層耐火建築物等の所有権等の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置,金融業務特別地区における認定法人に係る所得の特別控除制度の創設等沖縄の経済振興のための措置等を講ずる

・ その他,製品輸入額が増加した場合の特別税額控除制度の廃止等既存の特別措置の整理合理化を行うとともに,特別国際金融取引勘定に係る利子の非課税制度等期限の到来する特別措置についてその適用期限を延長する等所要の措置を講ずる

ことを内容としている。

なお,平成14年度税制改正事項のうち,連結納税制度を創設すること等を内容とする「法人税法等の一部を改正する法律案」については,その準備作業が複雑かつ膨大であるため,法案の提出は5月上中旬になるものと見込まれている。

 

日本監査役協会,「商法等の一部を改正する法律案要綱」に対する協会意見を法務省へ提出

日本監査役協会は、さる平成14年2月19日、「商法等の一部を改正する法律案要綱」に対する意見を法務省民事局参事官室へ提出した。

同協会では、今回の商法改正要綱に対してどのような形で意見を述べるべきかについて、監査法規委員会で検討を行ってきた。その結果、下記の内容で法務省に対する意見表明を行うことを2月14日の常任理事会に付議し,承認を得た。

なお、協会から各界へ建議・具申を行う場合は理事会に諮ることとなっているが、今回の意見内容は中間試案段階で述べた意見と本質的に変わらないこと、法制審議会総会以降,ただちに立法作業が開始されていることに鑑み、理事会メンバーに対しては常任理事会の同意の下に法務省への提出前に事情を述べ意見内容を送付し、了承を求める手続をとることとした。

意見書の全文は,以下のとおり。

 

「商法等の一部を改正する法律案要綱」に対する意見

社団法人日本監査役協会

当協会の意見は、昨年4月24日付で法務省民事局参事官室から照会された「商法等の一部を改正する法律案要綱案中間試案」に対する6月6日付意見書(抜粋添付)にて申し上げた通りであります。

なお、今般法制審議会が2月13日に決定した標記要綱につきまして、少なくとも下記事項についてご配慮賜りますよう重ねてお願いする次第です。

監査委員会制度については、監査役制度に代替させるものとして想定されていると思われるが、下記の点で現行の監査役制度よりも監査品質が低下する懸念があるので、そのような懸念が現実のものとならぬよう配慮願いたい。

1 一部自己監査となる。

取締役をメンバーとする監査委員会の監査は、主として執行役の業務執行を対象とするものではあるが、取締役の職務執行も監査対象に含まれることから、一部「自己監査」となり、監査に対する客観性と信頼性を低下させる懸念がある。

そこで、監査委員会のメンバーとなる者は、自己監査の弊害を招かぬように、高い精神的独立性を保ち、厳正な監査に努めなければらないことを周知徹底する必要がある。

2 常勤者による監査等の措置が必要である。

現行の監査役制度は常勤制が採られ、監査役は取締役会、経営会議等重要会議への出席他を通じて情報収集を行い、会社の意思決定のプロセスを日常的に監査し、リスクの発見・未然防止を図っている。監査委員会に常勤の取締役を置かない場合は、こうした監査に必要な情報収集力を低下させ、監査品質が低下する懸念がある。

監査品質の低下を防止する観点から、取締役会で決定しなければならないとされている「監査委員会の職務の遂行のために必要なものとして法務省令で定める事項」(要綱第十一の三の1の(一)の(2))が監査委員会の情報収集を確保・充実させるものとなるよう、法務省令の策定に当たり留意されたい。