▽三角波△

大きな課題を残す平成14年度税制改正 

 

 

 平成14年度税制改正の法案がまもなく国会に提出される。今回の税制改正にあたっては、連結納税制度の導入や法人事業税における外形標準課税、中小企業の事業承継税制、発泡酒に係る酒税の見直し、たばこ税の引上げ、生損保控除の見直し、登録免許税の見直し、老人マル優制度の見直しなどの大きな課題について各方面での精力的な検討・議論が行われたが、税収見通しの悪化と来年度予算における国債発行額の30兆円枠という状況の下、連結納税制度の導入と老人マル優制度の段階的廃止を除き、大きな課題のほとんどが見送られた。
連結納税制度の導入と今後の課題
 昨年11月下旬に、財務省が事務作業の遅れを理由に、平成14年度からの導入が困難との見方を示し、一時は見送りとも思われた連結納税制度だったが、最終的には、関連の法案提出を遅らせることで、実質的な14年度導入が実現することとなった。遅れるとはいうもののわずか数ヵ月の猶予の中で法人税法を全文書き下ろすのに匹敵する精緻かつ膨大な法案作成作業を遂行する事務当局の超人的な努力は賞賛されこそすれ、批判されるいわれは全くなかろう。
 連結納税制度の導入に伴う減収額は約8,000億円と試算されており、この補填策が別途講じられることは財政難の折必要であるが、連結付加税が2年後の見直しを前提とするものの、2%の税率で課せられたことは非常に残念であった。本来、連結納税制度は経済実態に則した課税を行うという観点から導入されるものであり、企業への恩典的な措置ではない。にもかかわらず、連結納税制度を適用するグループに懲罰的に付加税を課するのは、矛盾がある。2年後の見直しの際には、廃止されることが期待される。
法人事業税の外形標準課税の見送り
 法人事業税の外形標準課税については、総務省が、平成13年度改正で提示した案に修正を加えた案を改めて示したものの、平成14年度改正における導入は見送られた。ただし、与党の税制改正大綱では、「今後、各方面の意見を聞きながら検討を深め、具体案を得たうえで、景気の状況等も勘案しつつ、平成15年度税制改正を目途にその導入を図る」とされ、平成13年度改正よりも前向きな文言となった。
 しかし、経済界と総務省との間の考え方の隔たりは大きく、具体案をめぐっての検討は相当難航することが予想される。
税制抜本改革に向けた課題
 今回の税制改正では多くの課題が先送りとされたが、政府においては、税制調査会のみならず経済財政諮問会議においても、早々に税制抜本改革の検討を始める動きが見られる。
 そうした抜本改革の議論で必ず取り上げる必要があるのは、まず消費税である。直間比率のバランスからいっても、わが国の財政構造改革の観点からいっても、税率の引き上げは早晩行う必要がある。これに伴い、インボイスの導入、簡易課税・免税点などの見直しは不可避である。
 次に必要なのは、所得税の改革である。税率構造のフラット化の一方、課税最低限の引下げが大きな課題である。
 法人課税については、事業税が大きな課題として残されているが、この問題は単なる外形標準課税の是非ではなく、国と地方の税源配分の問題にまで踏み込んだ地方税財源全体の見直しの中で検討されるべきである。

〈Y.O 〉