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 連結納税制度導入への具体的課題

 

 平成14年度税制改正における最大の課題である連結納税制度の導入については、政府税制調査会の法人課税小委員会で精力的な審議が行われている。さる6 月1 日,6 月26日及び7月24日の三回にわたって、制度の具体的な論点について議論が行われた。財務省のホームページ(http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top.htm)に掲載されている提出資料を見ると、相当踏み込んだ内容が記載されている。この中の重要な論点について整理したい。

グループ内取引に時価を適用
 まず、提出資料をみると、連結納税グループ間の取引を時価で行うことを強調している点が注目される。
 時価取引を強調する理由としては、@わが国の商法における法人と株主・債権者との間の法律関係が基本的に単体法人を前提としていること、A親会社が合併される等により連結納税制度が適用されなくなる可能性があること、B子会社が連結納税グループから離脱する可能性があること、C租税特別措置など特定業種などを対象とした税額控除制度があることが挙げられている。
 そうした前提の下、今回の提出資料においては、完全に一体となっている企業グループを連結納税グループとするとした上で、連結納税グループ内で行われた資産の譲渡等により生じた損益は譲渡法人側で繰り延べることとされている。
 この考え方は、平成13年度税制改正において整備された企業組織再編税制において、組織再編成に伴う資産の移転に係る譲渡損益を原則として時価ベースで認識し、一定の要件を満たす「適格組織再編成」の場合のみ、課税を繰り延べるという考え方と相通じるところがある。


グループ内寄附金の全額損金不算入
 資産等の譲渡損益を繰り延べるという考え方と同じ方向で考えられているのが、連結納税グループ法人間での金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算である。すなわち、グループ内の金銭債権は限度額の計算対象から除外するという考え方である。
 ところが、連結納税グループ内の寄附金については、内部取引であるにもかかわらず全額損金不算入とされている。これは資産等の譲渡損益の繰延や貸倒引当金の繰入限度額計算の考え方とはまったく逆といわざるをえない。
 この点、それぞれの取扱いについてどのように整合性を説明するのか疑問が残るところである。


投資修正のあり方
 連結損益として計上された連結子会社の所得金額あるいは欠損金額が、子会社株式の譲渡により、再度、子会社株式の譲渡損益として、連結所得計算に二重に計上されることを防ぐのが投資修正である。
 法人課税小委員会の資料において,譲渡を行う子会社株式の帳簿価額を修正する方法として子会社株式の譲渡損益の額を修正する方法とが示されているが,譲渡する意思のない子会社株式の帳簿価額を毎期修正するより,譲渡した場合のみ損益を調整する方法が実務的に簡潔なのではないかと考えられる。
 他方,子会社が含み益のある資産をグループ以外に売却し含み益を実現させた上で,親会社が子会社株式を譲渡すれば,投資修正の結果,実現した含み益を反映して子会社株式の帳簿価額が高くなっているので譲渡損が発生する。結局連結所得としては,含み益の実現と子会社株式の譲渡損が相殺されることになる。このような事態を阻止するため,米国ではLDR という措置により,株式譲渡損を否認されている。ただし,最近,LDR を無効とする判決が現れており今後の動向が注目される。
 投資修正の問題は,含み損益の取扱いにもつながる重要な課題であり,わが国の制度設計においても非常に重要な意味を持っている。

〈Y.O 〉