<インターネットで学ぶ会計学>

国際税務

執筆者:鈴木一水 

 「国際税務」という用語は、国境を越えて行われる企業活動にかかる租税の課税・徴収に関する事務、という意味で一般に用いられている。わが国の企業による国際的な活動は、日本で課税される(居住地国課税)だけではなく、活動を行った国または地域でも課税される(源泉地国課税)。したがって、企業活動の税効果(税法適用結果)を予測したり、実際の納税額を算定するためには、わが国の税法のみならず、活動を行う国や地域の税法や、さらには租税条約も理解しておく必要がある。

 国際取引に対する課税制度は、課税の決定・調整に関するものと、租税回避の防止を目的とするものに大別される。

 課税の決定・調整に関する制度としては、所得税法(わが国では法人税法や地方税の所得課税に関する規定を含む)における非居住者および外国法人に対する課税制度のほかに、居住地国課税と源泉地国課税の国際的二重課税を排除するための外国税額控除制度や租税条約がある。また、外資導入促進のための優遇税制の存在も忘れてはならない。

 他方、企業が通常は行わないような国際取引を利用したり偽装して脱税や租税回避行為を行うことを防ぐための制度として、移転価格税制、過少資本税制、タックス・ヘイブン税制がある。

 これらの諸制度は、日本を含む多くの国や地域でも採用されている。したがって、国際的に事業を展開する企業は、わが国の税制はもとより、活動を行う外国や地域の国際課税制度も熟知する必要がある。さらに、国際二重課税や有害な租税競争に関する調整を行う国際機関、たとえばOECD、国連あるいは欧州連合等の動向にも注意を払う必要がある。

 国際課税制度の概略を知るには、各国の税務当局が開設したサイトで公表されている各国の税制に関する解説が役に立つ。しかし、個別具体的な実際の取引にかかわる問題点の解決に役立つほどの詳細な情報をここから入手するには無理がある。あくまで国際税務の全体的な枠組みを理解したり、問題の所在を把握する程度での利用にとどまる。

 実際の問題点を分析したり、タックス・プラニングを行う場合には、専門文献や情報サービスを利用したり、国際税務専門のコンサルタントに相談せざるをえない。とくに国際税務コンサルタントの多くは、単なる相談や納税申告書作成だけではなく、海外における子会社の設立や税務当局との折衝まで行っている。国際税務コンサルタント業務は、ビッグ5と関係を持つ大手監査法人系のコンサルタントのほかに、個人の公認会計士や税理士も手がけている。国際税務には、高度の専門知識と豊富な経験、そして幅広い海外ネットワークが要求されるので、コンサルタントの選択には、慎重を要する。コンサルタントの開設したサイトには業務内容の説明があるので、どのコンサルタントと契約するかを検討する際に、ある程度は参考になる。

 なお、次ページで紹介するサイトのほかに、筆者が本誌2000年9月号に執筆した「タックス・リサーチ」で紹介したサイトも国際税務を取り扱っているので、あわせてご覧いただきたい。

財務省「国際課税に関する資料を見る」

http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/kokusai.htm

 財務省のサイトの一部。国際課税制度、外国税額控除、タックス・へイブン税制、移転価格税制、過少資本税制および租税条約の概要や、有害な税の競争への対応に関する資料が、ポイントごとにまとめられ、さらに図解による説明もついている。初心者が国際税務の全体像を理解するには有用である。

PricewaterhouseCoopers「税務ホットライン」

http://www.japan-bus.pwcglobal.com/zeimu/index.html

 ビッグ5の1つPricewaterhouseCoopersによるサイト「ジャバニーズ・ビジネス・ネットワーク」の中の「税務ホットライン」ページ。諸外国の税制や国際機関による国際課税制度に関するニュースの要約のほか、タックス・プラニングの説明もある。とくに米国税制の解説が充実。

World Tax

http://www.paradine.com/worldtax/index.html

 60以上の国または地域の税制に関する解説のほか、国際税務に関する文献その他の参考サイトへのリンク集。各国の税制に関する解説については、国による詳細度の格差があるものの、かなり充実している。とりあえず諸外国(日本を含む)の税制を学びたい人にはお勧めのサイト。

Tax World

http://www.taxworld.org/

 タイトルは前記のサイトと紛らわしいが、まったく異なるサイト。米国における税務会計研究の第一人者の一人であるThomas C. Omer教授(イリノイ大学シカゴ校)の管理するサイト。各国の現行税制に関する解説だけではなく、税制の歴史や租税政策に関係する各種団体へのリンクが特徴。

Tax and Accounting Sites Directory

http://www.taxsites.com/international.html

 約150の国または地域の税制に関する解説(多くはErnst & Youngのサイトにリンクされている)のほか、各国の税務当局、専門家団体および市民団体へのリンクが豊富。リンク集の決定版。

tax.cch.com

http://www.tax.cch.com/

 米国の出版社では国際税務に関して多くの書物を出版しているほか、最新の情報をインターネットを通じて配信する有料サービスを行っている。代表的なものとして、CCHによるCCH Tax Research Networkのほか、RIAによるRIA CHECKPOINT(http://riahome.com)がある。

新日本アーンスト アンド ヤング

http://www.sney.com/japanese/c1.html

 大手監査法人系の国際税務に関するサイトの主たる内容は広告宣伝である。他の同様のサイトに、http://www.jp.andersen.com/market/tax/index.html、http://www.chuoaoyama.or.jp/service/job8.html、http://www.tohmatsu.co.jp/services/iic/index.html等がある。

フランス税務会計案内

http://www.page.sannet.ne.jp/kkobayas/Index.htm - French-tax

 ページ管理者いわく「フランスの会計税務について完全版となるようなものを日本語で書いたのですが、どの出版社も、利益が望めないという事で扱ってくれません。」という事情で無料公開されているフランスの税制、会計制度および会社法に関する解説。こういうサイトが増えてくるとありがたいです。