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 財務会計基準機構設立

 去る7月27日、「財団法人財務会計基準機構」(以下、財団)が設立された。

 財団は、一般に公正妥当と認められる企業会計基準の調査研究・開発、ディスクロージャー制度等に関する諸制度の調査研究やそれらを踏まえた提言を行う。

 組織面においては、資金調達、人事および運営全般を決定し執行する理事会と、理事・監事の選任および事業計画・予算等の重要な事項に助言等を行う評議員会を設置する。それらとは別に、企業会計の基準およびその実務上の取扱いに関する指針の開発・審議を行う「企業会計基準委員会」が設けられる。テーマ選定等に関する協議を行う「テーマ協議会」を設けるほか、委員会のもとには、作業部会としてテーマごとの専門委員会を複数設置する予定である。

 なお、財団の役員等は以下のとおり。

財財務会計基準機構役員

理事長小林正夫〓鞄本ユニパックホールディング社長

理 事鵜飼克全国銀行協会常務理事

江頭憲治郎東京大学教授

奥山章雄中央青山監査法人代表社員

北村敬子中央大学教授

張富士夫トヨタ自動車且ミ長

鶴島〓夫東京証券取引所副理事長

中地宏監査法人ナカチ代表社員

平松一夫関西学院大学教授

福間年勝三井物産褐レ問

藤澤義之鞄本興業銀行会長

松浦徹〓明治生命保険相互会社常務取締役

山元〓士日興證券兜寰ミ長

理事(常勤)松山雅胤

監 事春英彦東京電力兜寰ミ長

監 事山本秀夫公認会計士

 【問い合せ先】

 財団法人財務会計基準機構 総務部

 〒107―8790

  東京都港区赤坂1―8―10 第9興和ビル

 電話03―5561―9618(代表)

 

基準書第141,142号

 FASBは,APB意見書第16、17号に代わる基準書第141号「事業の結合」および同第142号「暖簾および他の無形資産」に関する再審議を5月中に完了し,6月29日全員一致の投票により採択して7月後半に公表した。事業の結合に関する課題は1996年に議題として取り上げられ,1999年9月に持分プーリング法の禁止と暖簾の最長20年償却を軸とする公開草案が公表された。この提案は実務に相当の影響をもたらすところから広範な論議を呼び,議長は,上院と下院の委員会で証言を求められたりした。再審議の後,FASBは本年2月に修正草案を公表し,暖簾は償却せず,減損テストの対象にすることを提案して意見を求め,さらに審議を続けて基準書の発行に至ったものである。

基準書第143号

 FASBは6月末に基準書第143号「資産除却債務の会計」に関する審議を完了して全員一致の投票により採択し,7月後半に公表した。この議題は当初原子力発電所解体費用の会計処理の問題として取り上げられ,その後範囲を拡大して他の業界における類似の費用も対象に含めた。

 基準書は,そのような債務を負ったときに当該負債の公正価額により記録し,対応する原価は資産化して関連する長期資産の帳簿価額に含めることを要求する。負債は時の経過に従って現在価値の増大を反映させ,資産化した原価は関連資産の耐用年数にわたって減価償却を行う。負債の決済額と残高との間に差異がある場合には,損益に反映させる。

 新基準は2002年6月15日以降に開始する事業年度から発効するが,早期適用は奨励される。

「問題点を理解するために」(Understanding the Issues)

 FASBは,特に新しい考え方を導入したときには,構成員が事情をよく理解していることが重要であると考えて,本年5月から表題の新しいシリーズの刊行を開始した。その手始めとして,5月と6月に概念書第7号「会計上の測定におけるキャッシュ・フロー情報および現在価値の使用」中の次の問題点四つを取り上げた。

予測キャッシュ・フロー:シナリオが複数ある場合には,現在価値を測定するにあたって,従来使用していた最善の見積りではではなく,確率を使用して予測するほうが合理的であることを例示して説く。

公正価額による負債の当初測定:取引を自社の用役部門により決済する計画であっても第三者に発注した場合の予測利益を含めるべきことの合理性を説く。

公正価額による測定:確率した市場がない場合でもよく知られた技法や情報を使用して予測に基づく見積りができるとしてその例を挙げる。

信用度と負債の測定:負債の公正価額を測定するときに債務者の信用度を考慮する必要性を長期の割引債を発行した場合を例示して解説する。

基準勧告委員会のメンバー決まる

 IASCは6月25日に基準勧告委員会(Standards Advisory Council)のメンバー49名を発表した。日本からは、辻山栄子武蔵大学教授、八木良樹株式会社日立製作所代表取締役副社長の2名が選出されている。

 日本以外のメンバーの出身国は以下の構成となっている。

 アフリカ     3  中南米      3

 日本を除くアジア 6  中近東      2

 オセアニア    2  北米        12

 中東欧      2  世銀等の国際機関 5

 EU       12

 また、公式なオブザーバーとして欧州委員会、米国SECと並んで日本の金融庁が参加する。

  同委員会の主な役割は議案の内容や優先順位、基準設定プロジェクトについて審議会に助言を与えることである。メンバーは地域的な広がりだけでなく所属母体が企業、学会、公的機関、監査法人等広範囲にわたっており、統一基準作りに向けたIASCの意気込みが感じられる人選となっている。

 委員会の第1回会合は7月23、24の両日ロンドンで行われる予定。

東証、平成13年3月期の連結決算発表状況等の集計結果を発表

 東証は、7月6日、東証上場会社の平成13年3月期の連結決算発表状況等を取りまとめ発表した。今年の特徴点は以下のとおりである。

 1 連結決算発表会社数は増加傾向

  連結決算発表会社数は、前年の1,501 社から53社増加して1,554 社となった。53社純増の内訳は、増加要因が新規上場68社、連結の新規作成23社、決算期変更3社であり、減少要因が上場廃止37社、連結の作成取り止め3社、決算期変更1社であった。

  また、3月期決算会社全体(1,683 社)のうち、連結決算発表会社の占める割合は92.3%と、前年(92.2%)と同水準であった。

 2 連結決算発表までの所要日数は本年も短縮

  決算期末から連結決算発表までの平均所要日数は、前年比で3.6 日短縮され、50.3日となった。具体的に見てみると、4月中に発表を行った会社が前年比38社増加して102 社(構成比6.6 %)となる一方、6月中に発表を行った会社が131 社減少して45社となるなど、1,111 社(同76.1%)が前年よりも早期発表しており、全体として決算発表の早期化が顕著に見られた。なお、平均所要日数の推移をみると、70日を切ったのが平成6年3月期(69.5日)、60日を切ったのが平成11年3月期(59.4日)であり、連結決算発表は加速度的に早期化しており、今年が過去最短となった。

  〈連結決算の早期発表会社上位10位〉

会社名所要日数前年比会社名所要日数前年比

メッツ2日−日日立機電工業19日▲7日

アドヴァン6 ▲18HOYA20 ▲1 

京都きもの友禅9 −日製産業20 ▲1 

ホギメディカル10  0花王23 +2 

日信工業16 ▲2クレスコ23 −

KOA17  0   

 (注1) 上記の会社はすべて連結決算と個別決算を同時発表。

 (注2) 個別決算発表の平均所要日数は49.2日であり、早期発表会社上位10位は、上記の会社以外に、マネックス証券(所要日数18日)、東京製鉄(同20日)であった。

 3 連結決算と個別決算の同時発表会社が大幅に増加

  連結決算発表会社1,554 社のうち、連結決算と個別決算を同時に発表した会社数は、前年の1,231 社から235 社増加して1,466 社となった。連結決算発表会社数全体に占める割合も94.3%と前年よりも12.3ポイント増加した。

 4 連結決算発表は今年も特定日に集中

 連結決算の発表が最も集中したのは5月25日(金)の278 社(連結決算発表会社全体に占める割合は17.9%)であり、昨年の最集中日である5月26日(金)の243 社よりも35社上回った。

金融審議会,生保経営改善に関する中間報告を公表

 6月、金融審議会は生命保険の経営改善に関する中間報告を公表した。報告の内容にはディスクロージャーやガバナンスの問題などが含まれているが、とりわけ注目されたのが保険契約の契約条件の変更、いわゆる予定利率の引き下げ問題である。現在、この中間報告に対して、一般の意見が募集されている。

 生命保険会社は集めた保険料を運用し、その収益を保険契約者に還元している。その運用収益をあらかじめ見込んで保険料の算定に反映させる手段が、予定利率である。保険料の算定に反映させるということを言い換えれば、保険会社が予定利率での運用を保証することに等しい。予定利率が高ければ保険料は安くなるが、逆に保険会社の負担が高まることになる。

 高度成長期には、ある程度高い予定利率を設定しても金利水準が高かったため、何の問題も生じなかった。しかし、1990年代以降、低金利が続いたため、それ以前に締結した高予定利率の契約に生命保険会社は悩んでいる。生命保険会社の破綻が相次いでいるのも、その真の原因の多くは高予定利率の契約にある。

 現在、業界がかかえている契約の平均予定利率は3%台半ばにあるとみられている。10年国債の金利が1%台の前半にあることを思い起こすと、予定利率で約束した3%台での運用は至難である。

 このため、契約時点で約束した予定利率を変更できるようにする案が今回の中間報告で盛り込まれたわけである。実のところ、かつての保険業法には予定利率の変更条項があったが、改正によって削除された。その条項の復活案というわけである。

 しかしながら、予定利率を変更して引き下げれば、保険料が上がるか保険金が削減されるかのどちらかである。他方、保険会社の主張は、「保険会社が破綻するよりはましである。破綻すれば、その影響はすべての契約に及ぶが、予定利率の引き下げの場合、高予定利率の契約だけに限定することも可能だ」とする。

 もっとも、報告書案では、予定利率を引き下げるには契約者集会での特別決議、裁判所の関与等、厳格な要件の必要性が示されている。それだけに、案のとおり予定利率の引き下げ条項が認められたとしても、それが現実にワークするどうかは疑問である。

 今後、生命保険会社の経営をめぐる議論が深められるわけだが、よい利率の変更に関して、マスコミを初めとする反対意見が強硬なため、報告書案どおりの法改正にもちこめるかどうか、まだまだ前途多難である。

長期保有株式に係る少額譲渡益非課税制度の創設

 さる5月24日に閣議決定され,同日に国会に提出されていた緊急経済対策に係る国税関係の改正法案である「租税特別措置法の一部を改正する法律案」については,翌5月25日に衆議院本会議で財務大臣の趣旨説明と審議が行われ,財務金融委員会に付託された。5月31日には,衆議院財務金融委員会において提案理由の説明が聴取され審議が開始された。6月5日には審議を終え,賛成多数で可決された。同法律案は,6月7日には衆議院本会議で可決され,その後,参議院に送付された。

 参議院においては,6月8日の参議院本会議において,財務大臣の趣旨説明と審議が行われ,財政金融委員会に付託された。参議院財政金融委員会では,6月12日に提案理由の説明が聴取され,6月14日及び19日に審議が行われた後,賛成多数で可決された。翌6月20日には,本法律案は参議院本会議で可決・成立した。

 今回成立した「租税特別措置法の一部を改正する法律」は,最近の経済情勢等を踏まえ,個人投資家の市場参加の促進等の観点から,個人の長期所有上場株式等に係る少額の譲渡益を非課税とする特例措置を講ずるもので,その概要は,次のとおりである。

1 長期所有上場株式等の譲渡所得の特別控除の創設

 個人が,平成13年10月1日から平成15年3月31日までの間に,所有期間が1年を超える長期所有上場株式等を譲渡した場合における申告分離課税の適用については,一定の要件の下で,その年分の長期所有上場株式等の譲渡所得の金額から100 万円の特別控除を行うこととする。

 (注) 「上場株式等」とは,上場株式,店頭売買登録株式,上場株式投資信託の受益証券をいう。

2 施行期日

 平成13年10月1日

日本監査役協会、委員会報告書「社外監査役に期待される役割」を公表

 日本監査役協会では,社外監査役検討委員会において平成12年4月より検討を続けていた。

 このほど報告書「社外監査役に期待される役割」をまとめ,公表した。

 同報告書は、T監査役の立場についての基本認識,U全監査役に共通して期待される役割,V社外監査役に期待される活動、の以上3本柱で編されているが,本文中において「ここで特に社外監査役への役割を特記するのは,最近監査役制度についての批判が高まり,その議論の中には,監査役制度に代えて社外取締役による監査委員会制度が検討されたり,あるいは社外監査役の数を半数以上に増強する案など,『社外の視点』を如何に強く取り入れるかということが,中心的に論じられているからである。」というコメントがなされている。

 社外監査役に期待される活動の部において、5つの提案があるが,それは次のとおり。

1 社外監査役への社会的期待を認識する

 「社外監査役は,社外監査役が監査役制度に導入された経緯や,社会的に求められている責任を自覚し,企業の健全性の確保に貢献することを求められている」

2 経営トップへの忌憚のない質問,意見具申を行う

 「経営トップへの忌憚のない質問や意見具申は,特に社外監査役に求められており,経営陣に対する効果や影響力も大きい場合が多い」

3 「社外の目」と「監査の目」をもって臨む

 「社外監査役は,社内監査役だけではカバーしれきない『社外からの目』と,経験・経歴を活かした『監査の目』を期待されている」

4 監査役会を通じて具体的に監査の実効性を上げる

 「社外監査役が,監査の実効性を上げるためには,監査役会を活用することが重要である。特に非常勤の社外監査役にとって,監査役会に出席し,他の監査役の監査結果を活用することは不可欠の条件である」

5 社内監査役との役割分担を明確にする

  〜この項は,主として非常勤社外監査役への提言である。

 「非常勤監査役は,勤務時間の制約や社内情報の不足を補うために,積極的に常勤監査役と役割分担を行い,協働して監査目的を果たすように努めるべきである」