▽三角波△

コーポレート・ガバナンスに関する商法改正の監査役制度への影響

 

 

 

  昨年12月に成立したコーポレート・ガバナンスに関する商法改正が5月1日から施行される。
 この改正によって,これまで総株主の同意が要件とされていた取締役の責任の軽減につき、取締役の行為が悪意または重過失によるものではない場合に、株主総会の特別決議や定款授権に基づく取締役会決議によることができることとされた。なお、軽減の範囲については、取締役の立場(代表取締役や社外取締役)に応じて、それぞれの報酬を基準に定められる。
 また、株主代表訴訟制度の合理化も図られ、監査役の考慮期間の延長、訴訟上の和解における取締役の責任免除の明確化、取締役を補助するために会社が行う参加の申し出に関する規定の整備などが行われた。
 一方、社外監査役制度の強化を中心に監査役制度の見直しも行われた。


強化された社外監査役制度


 従来、監査特例法上の大会社については、監査役は3名以上必要で、うち社外監査役(就任の前5年間は会社またはその子会社の取締役または支配人その他の使用人でなかった者)が最低1名必要であり、監査役の任期は最短3年であった。
 今回の改正では、監査役の員数が3名以上である点は従来同様であるが、監査役の任期の最短期を4年に延長するとともに、監査役総数のうち社外監査役の占める割合を増やし「半数以上」とされた。しかも、社外監査役の要件が「その就任前に会社またはその子会社の取締役または支配人その他の使用人となったことがない者」と厳格になった。
 ただし、強化された社外監査役の員数・要件については、新制度移行まで3年間の猶予期間が与えられており、3月決算会社の場合、2006年3月期に係る同年6月の定時総会から、社外監査役(その就任前に会社またはその子会社の取締役または支配人その他の使用人となったことがない者)を半数以上とする必要が生じる。
 一方、監査役の任期については、改正法の施行の際に現存する株式会社の監査役で、かつ、この法律の施行後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結前に在任する者の任期は、なお改正前の規定が適用されるので3年となる。したがって、3月決算会社の場合、本年6月の株主総会で選任された監査役の任期は3年である一方、来年6月の株主総会以降に選任された監査役の任期は4年となる。


来年以降に選任する社外監査役に注意

 3月決算会社の場合、来年の定時総会以降に選任される監査役の任期は4年であり、2007年までの任期となる。したがって任期半ばの2006年に、社外監査役の要件の厳格化の適用を受けることになる。
 かつて当該会社の取締役であったが、就任の前5年間は会社またはその子会社の取締役または支配人その他の使用人でなかった者として、社外監査役と位置付けられていた監査役がいた場合、2006年の総会からは、このような監査役は社外監査役には該当しなくなる。したがって、監査役中このような者1名のみが旧制度下での社外監査役であった場合には、2006年の総会において、社外監査役を半数以上という要件をクリアするためには、少なくとも従来の監査役数と同数の社外監査役を新たに選任しなければならず、監査役数が一気に倍増してしまうという結果になる。
 今後の監査役選任にあたっては、その点の注意が必要となろう。

〈Y.O 〉